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2017年ヴィンテージ———オーストリアでは非常に質が高く豊作

世界的には2017年は最も収穫の少ない年のひとつだが、オーストリアは質的にもまた量的にも恵まれた収穫をすることができた。260万hl(10月の3回目の収穫量予測による)は、過去5年間の平均収穫量の25%増しで、多くの場所で空になっていたセラーを再び埋めることになろう。2017年にも遅霜や雹はあったのだが、前年ほどの被害を被らなかった。ヴァインフィアテルに限っては、酷暑の夏の長期にわたる極度の乾燥のため、収穫量は平均に比してやや控え目となった。

A picture shows a vineyard in fall, © Austrian Wine/Committee Kamptal.
© Austrian Wine/Committee Kamptal

2017年の天候

一般的にこの年は、温度が常に高低に大きく振れ、いくつもの気象観測上の記録が作られた。2017年は過去30年間で最も寒くて乾いた1月で始まり、対照的に2月は例外的に暖かかった。続く3月は過去251年で最も暖かい月を記録し、その結果植物界では早い開花が既に始まった。年初からの乾燥状態は続き、シュタイヤーマークのいくつものサブリージョンで、降水量はたったの1mmしか記録されていない。気温的には、続く4月は再び正反対の動きをする。9年間で最も低温で、月の後半には大量の寒気が流れ込み、開花の早かったリンゴだけにとどまらず、様々な作物に霜の害をもたらした。4月のこの寒さのせいで、この時点で2週間進んでいた生長サイクルにブレーキがかかった。対照的に5月は平均より暖かく、6月は更に気温が上昇し、過去21年で2003年に続いて(1℃違いで)2番目の高温を記録した。月の後半の厳しい熱波に伴う乾燥した状態は酷いものだった。

ワイン産地の乾燥状態は7月に入っても2つの熱波とともに続き、ようやく3週間後に寒気が流れ込み、高温と乾燥が多少やわらぎ、いくらか降雨もあった――ヴァインフィアテルではとても少なかったが。不幸なことに8月も非常に乾燥し、ヴァインフィアテルや北ブルゲンラントでは、降水量は最大50%減となった。それゆえヴァインフィアテルは収穫減(前年比7%減)を受け入れねばならなかったし、北ブルゲンラントも同様の問題に直面した。多くの生産者が大変な骨を折って畑を灌漑することで、収穫するブドウを救おうと試みたが、100万リットルの水はしばしば所謂焼け石に水に過ぎなかった。

ブドウの成熟は予定より2週間進んでおり、収穫は早期に始まったが、3分の1の収穫を終えたところで翌月に入り、雨が作業の進行を止めた。2017年の寒くどちらかと言えば多雨の9月は、再びいつもながら最も望ましくない収穫の中断をもたらしたが、10月は反対に天候が好ましく推移したため、10月中旬にはすでに大部分の収穫を終えた。ブドウの質が高かったため、ヘクタール当たり最大収量を20%引き上げることが許され、これによって近年収量が足りなかったワイナリーは、少なくともその損失の一部を補うことができた。

オーストリアのセラーにおいては、今年のブドウの喜ばしい高品質のおかげで、醸造上はほぼ何の問題も起こらないが、いずれにしても注意深く綿密な仕事が求められた。というのは個々の発酵にはユニークなものがあり、必要とあれば適切なタイミングで介入できるよう、注意深い観察が必要だからだ。品種固有のアロマと透明な果実個性とともに、ワイン達は既に味わいにおいて素晴らしい凝縮感と内実を見せており、未熟な段階で既に楽しめる一方、寝かせ育てることで好ましく熟成向上することへの期待も高まる。

ニーダーエスタライヒ (Niederösterreich)

全体として160万hl、5年平均の19%増し――ヴァインフィアテルだけが長い干ばつに苦しんだ。従ってヴァインフィアテルでは収穫は54hl/haが限界だったが、他方で例えばクレムスタールでは霜害があったにもかかわらず、73hl/ha以上の収穫が可能だった。幸運にもここでは遅霜も雹嵐も軽微な被害しか今年はもたらさなかった。煙で霜を払う方法が大いに活用され、また生産者の雹害に対する適切な事後処置もあって、大きな損害から免れることができた。一般的に1年の生長サイクルにおいて乾燥が最大の問題で、特に高いストレスを受けた畑区間の灌漑には、ワイナリーの労働力キャパシティー上限界があった。

2017年の収穫は通例より2週間程度早く始まり、9月の雨の間中だけ中断された。低温と既にブドウの実が健全に育っていたことで、房は悪天候に比較的よく耐えた。一般的に人々はよく熟して非常に香り高いヴィンテージに満足しており、品種特性が際立ってよく出ている。ブドウ果汁の品質の高さを取り分け喜んでいるのは、テルメンレギオン、トライゼンタール、カルヌントゥムの生産者達だ。従って、ヴェルシュリースリングとグリューナー・ヴェルトリーナーばかりではなく、ツヴァイゲルトとピノ・ノワールも、果実味特性と内容の詰まった味わいでワイン愛好家を満足させ、これらは消費者のセラーにどんどん収まっていくだろう。

ブルゲンラント (Burgenland)

ここでは生産者達は5年平均の28%増の収穫に非常に満足しており、幸運なことに前年の天候不良の影響は、あったとしても非常に限定的だった。北ブルゲンラントでは収穫がとても早く始まったため、付加的メリットとして、9月の雨は極一部のブドウにしか影響を与えなかった。大部分の収穫は10月初めには既に終わっていたが、特にノイジードラーゼー周辺では多少の房がまだ木にぶら下がっていた――プレディカーツワイン用だ。

ミッテルブルゲンラントにおいても、小さい実が粗くついたブラウフレンキッシュの房が適切なケアを受け、完璧に熟し、絶対的に健全に育った。ある女性生産者はこう表現する:「このヴィンテージは長く記憶に残るでしょう――絵本の中の年のように」。収穫されたブドウはセラーで素晴らしい酸のストラクチャーを見せた。そのため良好で清潔な醸造が可能となり、結果的に果皮とともに醸す赤ワイン醸造において、微生物の暴走を困難にした。今年の骨折りの結実は? 果実味に溢れ品種特性の良く出たワインで、豊かで深いボディーを持ち、味わいは非常にエレガント。白ワインの、今既に楽しめる特性は、若い赤にも当てはまる:熟してバランスの取れた酸が果実味を支え、中庸のアルコールが飲みやすさを保証する。そして今まだセラーで熟成中のワインについては、人々は完成した商品としてそれがグラスの中で輝くときを心待ちにしている。

シュタイヤーマーク (Steiermark)

最悪だった前年の後、2017年は過去5年平均の30%増の収穫を上げ、セラーはようやく再び満杯になるだろう。霜と雹は限られた場所にしか被害を与えなかったが、例外的にシルヒャーラントでは8月終わりの収穫が結構な量の雹害を被った。それ以外、天候はオーストリアの他のワイン産地同様に推移した。早い収穫は秋雨によって妨害されたが、夏の畑仕事がしっかり行われていたため、ブドウはダメージのない高い品質でセラーに持ち込まれた。収穫は、10月半ばにトロッケンベーレンアウスレーゼを摘んで終わった。

生産者にとってシュタイヤーマークの2017年は、高い生理学的熟成をし、明確なアロマと強い果実味を持った、非常にエレガントなヴィンテージだ。深みとフルなボディーも、しっかりした収量穫管理の賜物だ。ヴェルシュリースリング、ムスカテラー、ソーヴィニヨン・ブランの別なく、この年は品種の典型的個性がはっきりと前面に出ている。まとめれば、このヴィンテージは生産者のセラーと愛好家の棚をようやく埋めることになろう。若ワイン好きの今年のワインへの期待に応えるため、“ユンカー”の発売は通常より2週間早く始まった。

ウィーン (Wien)

この年ウィーンの生産者達は霜と雹嵐の害を免れ、一方で長年の平均を35%上回る収穫を夏の好天がもたらした。ウィーン(2017年の各月平均気温では、しばしばオーストリアで最も暑い場所だった)でも収穫は通常より2週間早く始まり、やはり9月の雨のため収穫を再開するまで多少の中断を余儀なくされた。他のワイン産地同様、悪天候の影響は比較的少なく、沢山の質の高いブドウがプレスハウスに持ち込まれた。「我々は素晴らしいヴィンテージを喜んでいる。何故なら今年は量的に満足が行き、質は群を抜いて高い。」と、ウィーン農業商工会議所の副会頭ヘアベアト・シリングはコメントした。という訳でフル・ボディのヴィーナー・ゲミシュター・サッツDACが期待できそうだ――そして果実味のはっきりとした2017年の若いウィーンワインは、今既に楽しめる。