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20年前、オーストリアのワイン生産者たちの間で、新しいフランス産のオーク樽の中で熟成されたプレミアムレッドブレンドをリリースすることが流行していました。でも、時代が変わり、新しいオーク樽は最先端ではなくなりました。

現在の生産者たちは「オレンジワイン」や、硫黄を添加しない「ナチュラル」ワインに注目しています。このワインには、「ビオワイン」、「スキンコンタクト」、もしくはドイツ語の「maischevergoren」という用語が使用されていることがあります。

A picture shows two glasses of natural wine.

ナチュラルワインとビオワイン

A picture shows a glass of orange wine.

オレンジワイン

ナチュラルワインとビオワイン

ナチュラルワインとその類義語であるビオワインには様々なカテゴリーがあり、ワイン生産者の介入を最低限に抑えて作られたワインで、過去10年ほどの間に人気が高まっています。
オーストリアでは、自社農園でブドウを有機的に栽培している生産者のみが、ラントヴァインとして「ナチュラルワイン」の濁りや酸化的特徴をもったワインを販売している。これは、単に原産地呼称として「エステライヒ(オーストリア)」と明記されていないワインにも同様に適用される。これらのワインは、自然なアルコール度数(ABV)を高めるために酒精強化したり、甘味を加えたり、ベントナイト(E-558)と硫酸(E-513)以外のワイン用添加物を使用することは許されていない;許可される最大亜硫酸含有量は70mg/l(分析公差を含む)。ワインのラベルに「ナチュラルワイン(Naturwein)」のような表記は一切認められていない。

A picture shows a biodynamic vineyard.
© Austrian Wine / Blickwerk Fotografie

基本的概念

ニュートラルワインの動きはフランスで1980年に始まりました。ジュール・ショヴェとジャック・ネオポールが酸化防止剤や二酸化硫黄添加物を使用せずにワインを作る方法について研究と実験を始めたのです。以降、ナチュラルワインは、1990年代と2000年代の多様で世界的な反体制文化の動きや反均一化、産業化、パーカーポイント文化の中で花開きました。

つまり、どういう意味を指しているのですか?大半の人は、ナチュラルワインのアイディアは次の通りであることに同意するでしょう。

  • オーガニックもしくはビオダイナミックなブドウ栽培 - 認証されているかに関係ない
  • 手摘みした果実を使用
  • 自発的な発酵、添加物/人工酵母を使用しない
  • 添加または調節しないことが必須条件です、つまり、酸性化や補糖が行われておらず、酵母栄養剤、酵素も使用されていない
  • スピニング・コーン、逆浸透膜、マイクロオキシジャネーション、凍結抽出など、ワインに過剰な手を加えない
  • 濾過しない
  • 清澄しない
  • 二酸化硫黄添加物を最低限または全く使用しない

上記の定義は、2017年1月に行われたナチュラルワインのパネルテイスティングにおいて、Decanter誌で採用されました。

ナチュラルワインには、次を主張するより熱心なサポーターたちが多く存在します。

  • 二酸化硫黄添加物を絶対に使用しない
  • 白ワインについてはマロラクティック発酵を阻害しない
  • 発酵中、温度管理を行わない
  • 新しいオーク樽を使用しない

より詳細な定義の試み

単一定義はないものの、生産者団体や祖時期の多くは、ボランティアベースで商品を分類・認証しようと努めてきました。Rawfairは、世界で主要なナチュラルワインのフェアの1つとなり、出展においては厳格な品質基準を設けています。例えば、1リットル当たりのSO2の量を70 mgまでに限定しています。これは、EU法で標準的なドライワインに認められた量の半分以下です。

数多く存在する生産者団体は全て、厳格なものからそうでないものまで、異なる規則を設けています。その中にはフランスの「Renaissance des appellations」、イタリアのトリプルA(共に、複数のオーストリアの会員が加入)、ViniVeri(国際的なメンバーが加入しているが、現在、オーストリアからは加入なし)が含まれています。

A picture shows wooden and concrete casks in a cellar.
© Austrian Wine / Robert Herbst

ブドウ畑とセラーでの一貫性

この時点で、「オーガニックおよび/またはバイオダイナミックの認証を受けるだけで十分ではないか?」という疑問が浮かぶだろう。その答えは複雑だが、栽培方法はワインセラーで行われる工程すべてを管理するわけではなく、一方で、総SO2値を従来のワインよりも低く設定し、いくつかのワイン処理工程を排除している。

生産者はオーガニック認証を受け、ビオダイナミック栽培がなされた美しい果実を使うかもしれません。しかし、カーヴでは、従来の作業でワインを生産するかもしれません。その場合、ボトルのビオダイナミックシンボルを見て、「産業」ワインではなく「ナチュラル」ワインであることを期待する消費者に誤解が生じることになるでしょう。ナチュラルワインの動きは、ワイナリーでもぶどう畑と同じ正直さが重要であることを認識することで、この問題に対応しています。

批判

アメリカ人作家/ジャーナリストAlice Feiringとイギリスで活動するワインマスター、Isabelle Legeronは、最も有名なナチュラルワインのサポーターでありコミュニケーターです。両者とも、産業ワインとは異なり、ナチュラルワインを「生き物」として捉えています。Legeronは、次のように説明をしています。「上質なナチュラルワインは、活き活きとした生き物で、感情豊かな多様な個性を明確に示しています」

カテゴリーについては、一部のワイン評論家と専門家がワインの潜在的な欠陥を許していると主張するなど、物議をかもしています。ナチュラルワインのファンは、曇ったワインや沈殿物を欠陥だと見なしていません。これらは、美しさなどが陳列基準となるスーパーでは棚から撤去されるのに十分な理由です。

ナチュラルワインには、時として従来のワインよりもブレタノマイセスといったバクテリアの数が多く、酸味レベルも安定しないことがあります。これらの要素が、特定のワインに「当てはまる」かどうかが、個別のテイストにとって重要なのです。ブレタノマイセスはしばしば、主要な構成物とされています。しかしながら、世界て最もクラシックな赤ワインの多くでは認められてません。

A picture shows a glass of orange wine.
A picture shows a glass of orange wine.
A picture shows a glass of orange wine.

オレンジワイン

オレンジワインはしばしば、ナチュラルワインと混同されます。そして2つは、時として同じものだと誤解されることがあります。ナチュラルワインは幅広いカテゴリーに当てはめられ、いでおごりーですらありますが、オレンジワインは単純にワイン生産技術の一つです。

オレンジワインという名称は、イギリス人ワイン輸入業者David A. Harveyによって2004年に作られ、それ以降ブドウの皮を長時間(数日間、数週間、数カ月間)漬け込んだ/マセレーションした白ワインを表現するために最も便利な方法として受け入れられる様になっています。

A picture shows the lids of amphoras burried in the ground.
© Austrian Wine / Carletto Photography

色に関する疑問点?

黒葡萄から果皮浸漬を短期間行って造られる'ロゼワイン'と同様に、'オレンジワイン'は白葡萄から発酵中の果皮浸漬を延長して造られる。これにより、「4つ目の色のワイン」、または「赤ワインのように作られた白ワイン」という概念のオレンジワインが存在する。

オーストリアのワイン法では、'オレンジヴァイン'や’オレンジワイン'という分類で、濁ったテクスチュアや酸化的な香りのあるラントヴァインを認めている。この規定は、ブドウ品種とヴィンテージを表記することも可能だが、<エステライヒ(オーストリア)>より詳細な特定の原産地呼称は認めていない。ブドウ品種とヴィンテージを記載しない場合も同様。従って、白ブドウの長時間にわたるスキンコンタクトは法律で規制されていない。

長期間皮を浸ける技術は、アドリア海側のかつてオーストリア・ハンガリーの国境であり、現在イタリアのフリウリやスロベニアのゴリシュカ・ブルダ地域で最もよく用いられています。皮を長期間マセレーションすることは、何世紀にも渡りこれらの地域で一般的に行われてきました。1844年のスロベニアのワイン生産マニュアルでこれを確認することができます。その作者である Matija Vertovec神父は、赤ぶどうと白ぶどうの両方について、7~30日間のマセレーションを推奨しています。

白ぶどうの皮、そして一部のケースでは茎も残すことは、クヴェヴリと呼ばれる大きな壺でワインを約8,000年も作ってきたワイングルジア共和国ではさらに古いアイディアです。クヴェヴリの中で白ぶどうを使って作られたグルジアのワインは、本来の「オレンジワイン」です。ここでは、皮の漬け込みは9ヵ月にも及びます。

オレンジワインは、赤と白の間の素晴らしいハイブリッドワインで、本来赤ワインでのみ見られるストラクチャーとタンニンと、白ぶどうのフレッシュさとフルーティさを味わえます。長期間にわたる皮の漬け込みで、熟れ過ぎた果実や傷んだ果実のようなものからハーブ、干し草、カモミールといった一般的ではないフレーバーがもたらされます

よくある誤解

オレンジワインは、明るい琥珀色から濃い赤みがかったブラウンまで多様化した色により、酸化させる必要があるという誤解が一般的にあります。酸化が望まれる目標であることは珍しく、スタイルにこだわるエキスパートであるワイン生産者は通常、大桶がしっかりと密閉され、発酵が完了するとつぎ足されるようにしています。

現在までに、数多くのオーストリアワイン生産者達が2005年以降、オレンジワインをの生産を始めています。中には、伝統的なフリウリ/スロベニアの方法でオレンジワインを生産している生産者もいます。つまり野生酵母を使った発酵、温度管理をしない、硫黄の使用を最低限に抑えるといった手段です。その一方で、より従来または「現代的な」パラダイムの範囲で皮を長期間浸ける技術を採用し、ホワイトワインにほんのわずかなスパイスを加えることを行っている生産者もいます。これが混乱のもとなのでしょう。一部のオレンジワインはナチュラルワインとして分類可能な一方で、必ずしもこの範囲の中に入らないものもあるのです。

最終的な誤解は、オレンジワインが常に粘土のアンフォラや同じような容器の中で作られるということです。グルジアの伝統ではその通りですが、フリウリやスロベニアでよく知られた生産者の大半は、上部が空いた木製の発酵槽を使用しています。

A picture shows two glasses of orange wine.

将来有望なニッチ商品

© Austrian Wine / Blickwerk Fotografie

将来有望なニッチ商品

ナチュラルワインとオレンジワインはどちらもニッチなカテゴリーかもしれないが、それでも多くのワイナリーのポートフォリオに加わるエキサイティングなワインであることは間違いない。中には、ワイン生産者が最も情熱を傾けるワインになることさえある。一方、このタイプのワインは多くのオーストリアワイン生産者に大きな関心を呼び起こし、その中でも最も優れた生産者は、現在最も魅力的で個性的なワインを生産しており、オーストリアワインにとっても、より広いマーケットにとっても、充実した存在になっている。

著者:Simon J. WoolfとAustrian Wine

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